玉川上水散歩

先日、日課玉川上水散歩をしていたら、前方に、ぬぼぉというのか、ずんぐりというのか、ちょっと異様な存在感のあるおじさんの姿が視界に入った。犬を連れていた。その場に立ちすくんでいる。おじさん、背中に立っている木と同化しているように見える。近くまでくるとおじさんが連れていたのは、黒と白い毛の柴犬だった。私はそのおじさんの前を通リ過ぎようとして何故か、犬を見ながら「何歳ですか?」と聞いていた。おじさんは、私に目をやると、「9ヶ月」と人懐っこい感じで云った。(だからあどけなさがあるのね、柴犬ちゃん) なんだか私は嬉しくなって、「お名前は?」と口走っていた。と、おじさんは、「うどん」と食べ物のうどんとは違う発音で云った。「うどんちゃんていうんだ、こんにちは〜」とタメ口で言って、手を軽く振りながらうどんちゃんを見ていたら、うどんちゃんは、ぷい、とそっぽを向いた。私は、「馴れ馴れしくてごめんね」と云ったあと、ゆるりと歩き出した。そして歩いてすぐの上水道とは反対側の小さな橋の上に立って水の流れを見ていた。ふと気が付くとうどんちゃんが好奇心いっぱいの目で私を見ていた。なんとも云えず可愛かった。(えー、さっきはそっぽを向いてたのに、私の事、気にしてくれてるー) なんだか私は嬉しくて満ち足りた気持ちになり、「またねー」と上水道を歩いて帰途についた。おじさんの声が、なんだか深沢七郎のようだったなぁ、と思いながら。はて、私はいつ本物の深沢七郎の声を聞いたのだっけ?YouTubeとかだった気がする。低くて太くて少ししゃがれた声だ。玉川上水深沢七郎とうどんちゃん

又会えたらいいね。ありがとう。